御曹司社長は恋人を溺愛したい!
電話は着信拒否にしてあり、話すこともない。 
両親からは一度も連絡もなかった―――悲しくないといえば、嘘になるけれど。
連絡があったとしても、二度と戻る気はないし、一緒に暮らすこともないだろう。

「雅冬さん。最近、仕事の量が多くないですか?」

残業をしている上に土日も仕事を持ち帰っているのを知っている。 
不満はないけれど、体を壊さないか、心配だった。

「少し長めに休みをとりたいからな。仕事、落ち着いたら、旅行に行こう」

「あー。いいですねえ。温泉でゆっくりしたいですね」

うきうきしながら、パチパチとホッチキスで資料をとめていく。

「違う。海外だ。新婚旅行だからな」

パチン。
ホッチキスの手が止まる。

「結婚しよう」

「い、今、言いますか!?」

雅冬さんが笑った。

「お前が言ったんだぞ。仕事をしている俺がかっこいいって」

「それはそうですけどっ」

悲しいことに否定はできなかった。
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