御曹司社長は双子の姉を溺愛したい!
春の嵐
春になり、私は大学に戻り、雅冬さんは宮ノ入グループの副社長になった。
八木沢さんは社長秘書だけは絶対に誰にも譲りたくないと言い張り、常務と兼任しているとか。
聖子さんは貴子様に言われたせいか、海外赴任について行き、『撫子の宮会』は滅多に開かれることがなくなり、これといった事件もなく、穏やかな日々を過ごしている。
テレビの桜の開花予想を眺めつつ、朝食の目玉焼きを皿にのせ、レタスとトマトを添えた。
パンをトーストし、カフェオレを置いて、ガラスの器にはイチゴを盛った。
「よし!できた!」
「菜々子。大学、楽しそうだな」
「楽しいですよ」
「そうか」
どこか残念そうに雅冬さんが言った。
一緒に働けなくなったのが、少し寂しいみたいだった。
「一年間だけですから」
「ああ」
私だって、本当は一緒にいたい。