御曹司社長は恋人を溺愛したい!
「本当に誘ったわけじゃなかったのか」

「誘う?なにをですか?」

「いや。いい」

気まずそうに雅冬さんは目を逸らした。

「はあ」

「お前、変わってるな」

雅冬さんは笑っていた。

「面白かった。また一緒に出かけよう」

「面白いって。笑わすためにですか」

「笑うと長生きするらしい」

「お笑い芸人の番組でも見ててください」

「お断りだ」

ひょいっと私のあごをつかむと、一瞬だけ唇が触れて離れた。

「またな。下に運転手が待っている。送ってもらえ」

がちゃ、とドアを開けてくれた。
わ、わ、わたしのファーストキスがああああっっ!!
もちろん、私が全速力でその場から逃げ出したのは言うまでもなかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「うー」

月曜になり、掃除のバイトにきたけれど、あまり眠れなかったせいで、ふらふらしていた。
日曜日は最悪だった。
何をしていたのか、思い出せない。

「珍しいね。菜々子ちゃん、寝不足かい」

「ちょっとね……」
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