御曹司社長は恋人を溺愛したい!
苦々しい表情を浮かべ、掃除用具をワゴンにセットした。

「もしや、恋!?」

「若いっていいねえ」

おばちゃん達は勝手に盛り上がっていた。
待ってよ。まだ何も言ってないのに。
決断早いんだよ。おばちゃん達は!

「新しい社長の秘書の情報を手に入れたよ」

「秘書達の家柄は大手飲料会社、茶道家元、銀行頭取、建築会社、宮ノ入の親戚、そうそうたるメンバーだね」 

探偵かよ。
そして、なぜなのか、すさまじい行動力と記憶力をこういう時だけ、おばちゃん達は発揮してくる。
だいたいどこから聞いてくるのよ!?
もう掃除婦じゃなくて、女スパイなるといいわよ。
絶対におばちゃん達だけは敵には回すまい……そう思いながら、バリッとゴマ煎餅をかじった。
今日の休憩タイムは緑茶とゴマ煎餅だ。
ゴマが香ばしくて、おいしい。

「はあ」  

ここの社長なんて、どうでもいい。
それより、雅冬さんだ。
< 32 / 170 >

この作品をシェア

pagetop