御曹司社長は恋人を溺愛したい!
私の稼ぎをあてにされている以上、収入ゼロは厳しかった。
なおかつ、バイトをクビになったとバレたら、凛々子は大笑いするだろう。

「わかりました」

そう答えるしか選択肢はなかった。
とりあえず、言われた通りにコピーをしたり、会議資料をまとめたり、頼まれたことを黙々とこなしていた。
雅冬さんは意外と仕事はできるらしく、手早くて指示もわかりやすい。
私が思っているより、実は優秀なのかもしれない。

「けっこう役立つな」

「簡単なことしか、してないですよ」

「それでも助かっている。あいつら、延々と話しかけてきた挙句、俺に物一つ渡すだけで大騒ぎだからな。仕事にならない」

はあ、とため息を吐いた。

「モテモテじゃないですか」

「まあな」

否定しなよ。
別にいいけど。
お礼状や挨拶状のノリ付けをしていると、バタバタと慌ただしく廊下を走る音がした。

「きたか」

雅冬さんは目を細めた。
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