御曹司社長は恋人を溺愛したい!
そうそうっ!と怖いので、とりあえず、適当にうなずいておいた。

「…信じられないわ」

大丈夫、私もそう思っているよ……。
その感覚は正常ですよと言ったかったけれど、余計なことを言うと混乱しそうだったので言わなかった。

「そういうことだから、邪魔するなよな」

社長室のドアを開け、外に追いやった。
ショックが大き過ぎたのか、もう中には入ってこず、帰って行った。

「あの人は…?」

「母親だ。宮ノ入聖子。実家は老舗百貨店で気位ばかり高い」

お父さんは宮ノ入の人だから、雅冬さんはお坊ちゃま、いわゆる御曹司ってやつね。
叩かれた頬が痛々しい。
秘書室に置いてあった冷凍庫を開けて保冷剤を持ってくると、ハンカチに包み頬にあててあげた。

「すごく痛そうですよ」

強張った顔から、緊張が解け、ふっと頬を緩めてハンカチを持っている手を掴んだ。

「なれているから大丈夫だ」

「なれて?」
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