御曹司社長は恋人を溺愛したい!
不安を消して
「菜々子は社長のこと、なんて呼んでいるんですか?宮ノ入さん?雅冬さん?」
凛々子はスーツの隙間から手を差し込み、胸に触れて言った。
「雅冬?」
一瞬、雅冬さんの険しい顔が緩んだ。
同じ顔、同じ声、動揺しない方がおかしい。
くすりと凛々子は笑いながら、耳元に唇をあて囁いた。
「雅冬、好きなの」
ぎし、と座っている雅冬さんの上から覆い被さり、凛々子は自分のブラウスのボタンをはずし、首に腕をからめたその時―――
「やめろ!」
雅冬さんはドンッと凛々子を突き飛ばした。
「あいつはこんな真似しない」
軽蔑するような目に凛々子は笑みを消して、目に涙を浮かべた。
「嫌でしたか?」
「菜々子なら―――よかったと思った」
正直すぎる感想に一瞬、凛々子の顔が素に戻っていた。