御曹司社長は恋人を溺愛したい!
姉は家を追い出される

家から追い出され、キャリーケースをガラガラとひきながら、歩いていた。
窓の隙間から、甘い煮物の匂いやフライの揚げた匂いがした。
夕飯の仕度の時間だからか、その匂いや音が余計に私を寂しくさせた。
仲良さそうな親子連れを見る度に泣きそうになる。
ここまで反対されるとは思ってもみなかった。

「私が雅冬(まさと)さんといるのって、そんな駄目なことなのかな」

霧雨が肩をぬらし、冷たかった。
電灯がつきはじめ、薄暗くなってきた。
さすがに野宿はしたくない。

「今日はビジネスホテルにでも泊まろう……」

大学に復学したくて、貯めていたお金があるから、それでアパートを借りればいいだけ。
そんな難しいことじゃないと自分に言い聞かせた。

「……大学だって、私の方がいいところに入ってたのに諦めて…働いてたのに」

涙がこぼれてきた。

菜々子(ななこ)!?」
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