御曹司社長は恋人を溺愛したい!
従兄
ふと目が覚めると、体は綺麗に洗われてベッドに寝かされていた。
何時なんだろう。
雅冬さんは自分を刻み込むように執拗に私の体を抱いた。
悲しいまでの苦しさが流れ込んできて、明るくふるまっているけれど―――本当は自信がない。
否定され続けて生きてきたのは私だけじゃない。
雅冬さんもだったから……
だから、私達は惹かれたのかもしれない。
お互いの持つ孤独を知っていた。
どれだけ、眠っていたのかわからないけれど、外は夕方なのか窓の外から見えた海に太陽が沈むのが見え、連れてこられた時はもう夜だったから、だいたい一日は経っているだろうということだけはわかった。
この海が見える家は雅冬さんしか知らないと言っていた。
「……唯一の逃げ場だったのかな」
出会った時も雅冬さんは苦しそうな顔で海を見ていた。
死んでしまうんじゃないかと、思って声をかけたのを思い出していた。
「雅冬さんはどこ?」
そばにいない。それが不安に感じた。
服が見当たらず、シーツを体に巻き付けて、寝室を見回したけれど寝室にはいない。
大急ぎで廊下に出ると、人影があった。
「雅冬さん?」
薄暗い中、目をこらして見ると雅冬さんではなかった。
「誰!?」