エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
会ってはいけない人

当時の彼は男盛りの三十五歳。
 
はだけたワイシャツから覗く大胸筋は滑らかで張りがあり、少し汗ばんでいる。

隙のないビジネスヘアに整えられていた黒髪は乱れ、やや波打つ前髪の下の理知的な瞳には初めて見る蠱惑的な色が灯っていた。

シーツに突き立てられたのは二本のたくましい腕。

見下ろしてくる美麗な顔が苦しげにしかめられたかと思ったら、ごつごつした大きな手が私の肌を這い、胸を鷲掴む。

彼と繋がることができても甘さを見出す余裕はなく、初めから強く速く攻撃的に打ちつけられて私は呻いた。

そこに幸せはない。


『京香さん……』


目を閉じている彼が私とは違う女性の名を呼んだ。

愛しさと悔しさの混ざった声で。

私は喘ぎながら彼の心の痛みが軽くなるよう祈り、そして同時にズルいことを考えていた。

これがきっかけで、布施(ふせ)さんが私を女として見てくれたらいいな……。

森尾瑞希(もりおみずき)、二十六歳。

生まれて初めて男性を誘惑し、そして愛しい罪の証を身ごもった夜の出来事――。

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