エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
けれどもそれはぎこちなく、余計に彼の眉間の皺を深めてしまった。
瑞希は目を逸らし、DNA鑑定書を封筒に入れてハンドバッグにしまうと席を立とうとする。
すると布施の手が伸びて、テーブル越しに瑞希の手を握った。
鼓動を跳ねらせた瑞希に、布施が苦しげな顔をして言う。
「座ってくれ。まだ話は終わっていない」
「布施さん……終わりにしましょう。知らなかったことにするのが一番いいんです」
「よくないだろ。義務ではなく俺が責任を取りたいと望んでいるんだ。認知をさせてくれ」
「勝手に産んだのは私です。布施さんが責任を取る必要はないんです」
布施が目幅を狭め、瑞希の手首に力が加わった。
逃がしてくれない様子の彼に、瑞希は仕方なく浮かせた腰を下ろす。
手を離してくれた布施が、いくらかホッとしたように表情を和らげた。
「森尾は誤解している。俺の子を産んでくれたのに、迷惑だと思うはずがないだろう。妊娠が判明した時に教えてくれたなら、産んでほしいと即答した」
「えっ……?」
驚きに目を丸くすれば、布施の口角が上がる。
目は弧を描き、諭すような声は優しい。