エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
(苦しくて、布施さんに知らせて守ってもらいたくなる時もあった。でもそれはできないし、誰にも相談できなくて、不安に押し潰されそうだった。何度夜中に泣いたことか)

向けられる視線が優しいから、強がりの仮面を剥がされそうになる。

妊娠中の苦しみを理解してくれた上に、産んでほしいという言葉までもらえて心が喜びに震えていた。

(もう十分です……)

お礼を言おうと口を開いたら、涙が溢れてしまった。

慌ててハンカチを出し、両目を押さえる。

(泣いたら駄目。同情してくれと言わんばかりじゃない。シングルマザーで育てると決めて産んだんだから、強くならないと)

布施が席を立った音がした。

涙を拭えば彼がすぐそばに立っていて、大きな手で頭を撫でられた。

滲む視界に映る美麗な顔は微笑んでいる。

「ひとりで頑張らせてすまなかった。だが、これからは……」

布施がジャケットのポケットからなにかを取り出し、瑞希の前に置いた。

それは白い指輪ケースで、蓋が開けられると大粒のダイヤのエンゲージリングが輝いた。

瑞希は涙が止まるほどに驚いて、息をのむ。


「俺と結婚してほしい」


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