エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
結婚はしないと突っぱねることができなかった。
彼への恋心が邪魔をして。
「急なお話なので、心が追いつかないんです」
指輪ケースをテーブルに置いて、瑞希は眉尻を下げる。
残念そうな顔をした布施だが、頷いてくれた。
「そうだな。結果を急ぎすぎてすまない。まずは離れていた三年分を取り戻さないといけないな」
指輪ケースは閉じられ、彼のポケットへと戻された。
それを見た瑞希は、受け取らなかったくせに残念に思う。
(もしこの先、布施さんが嘘偽りなく私を愛してくれたなら、その時に受け取りたい。でも……無理だよね)
ただでさえ女性としての魅力が乏しいのに、出産してからはメイクもファッションもいい加減になっている。
布施に愛される日がくるはずはない。
瑞希にとって布施は、手の届かない憧れの人。
片思いの期間が長すぎて、今はまだ夢物語にしか思えないのであった。