エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
【海翔が起きそうなので今夜はこれで。おやすみなさい】

(海翔を産む前なら、嬉しくて舞い上がっていただろうな。でも今は……)

 素直になれないのは、怖がっているせいだと瑞希は考える。

 布施の言葉を信じて結婚しても、愛情が本物でなければきっとお互いに苦しくなる。

 やっぱり無理だったと別れた時に、傷つくのは瑞希だけじゃなく海翔もである。

(だから私は怖いんだ。慎重になって当然でしょ)

 布施からも【おやすみ】という返事がきて、瑞希はスマホを畳に置いた。

 鼻水で苦しそうだった海翔の呼吸は、今は落ち着いている。

 半開きの口元が可愛らしく、ニコッと笑ったかと思ったら、うにゃうにゃと寝言を言った。

(寝ている時の海翔は、赤ちゃんみたい)

 困り顔だった瑞希の頬が緩む。

 どんな楽しい夢を見ているのだろうと、息子の頭をそっと撫でた。



 地球は同じ速度で動いているというのに、大人になると子供の頃より速く時間が過ぎる気がする。

 会いたくてたまらないと、布施からメッセージをもらった日から八日が過ぎていた。

 土曜の今日、瑞希は職場ホテルの大ホールにいる。

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