エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 新郎新婦が座っていた高砂も、あとはステージの足場を残すのみだ。

 瑞希は床に落ちた花びらを拾いつつ、もうすぐ退勤時間だと幾らか気を緩めた。

 すると昨日、布施から送られてきたメッセージが思い出された。

【明日の仕事は何時に終わる? キッズスペースのあるレストランを見つけたんだ。食事にいかないか?】

 瑞希の今日のシフトは十八時までである。

 それから帰宅して出かけるとなると、海翔の夕食時間が遅くなり、帰ってからのお風呂や就寝時間にも影響が出てしまう。

 生活のリズムが崩れるからという理由で、布施の誘いを断った。

 そうしたら日曜はどうかと提案されたのだが、残念ながら明日も退勤時間は同じ。

 断ってばかりで申し訳ないと思いつつも、また今度と返事をせざるをえなかった。

(避けているわけじゃないよ。本当に予定が合わないだけで)

 そんな風に心の中で言い訳していたら、つい仕事の手が止まっていた。

「森尾さん」と声をかけてきたのは蛭間で、瑞希はハッとして謝った。

「ぼんやりして、すみませ……あっ、花束! すぐにやります」

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