エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 そのことを残念に感じ、直後にそんな自分を不思議に思った。

(三人で会いたいという布施さんの誘いは受けるつもりでいるけど、仕方なく……だったはず。それなのに、残念に思うのはなぜ?)

 ゆっくり悩みたい気分だが、その時間はなさそうだ。

「パントリーの方、人が足りないから入って」と蛭間に言われ、急いでバックヤードへ向かう瑞希であった。



 十八時にタイムカードを押し、着替えをして家に帰りついたのは四十分後のことだ。

 海翔の夕食はだいたい十八時で、今日のようなシフトの日は母にお願いしている。

 きっともう食べ終えていることだろう。

「ただいまー」と玄関に入り、靴を脱ごうとして首を傾げた。

 見慣れぬ黒い革靴が揃えて置かれていたからだ。

(大きいからお父さんのサイズじゃない。誰の靴だろう。中敷きにフランスの高級ブランドのロゴが入ってる。結構長く履いていそうな皺が入ってるけど、綺麗に手入れされていて)

 瑞希は、かつて布施に言われた『足元には気を使え』という言葉を思い出していた。

 布施いわく、靴を見れば人柄がわかるというのだ。

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