エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 両腕を広げて腰を落とし抱きつかれるのを待っていたラパンは、意表を突かれて固まった。

 それから慌てて海翔に倣い、姿勢正しくお辞儀したから面白い。


「着ぐるみなのに焦り顔をしていたな」

「布施さん、ラパンは着ぐるみじゃなく生きているんですよ」

「悪い、ここは夢の世界だった」


 布施と瑞希が笑い合う。

 近くには可愛い制服を着た若い女性カメラマンがいて、瑞希たちに声をかける。

「お子様だけでよろしいですか? お父さんお母さんも一緒に写りませんか?」

(お父さんお母さん……。そう呼ばれると、普通の家族みたい)

 喜んでいいのかわからず戸惑った瑞希の背に、笑顔の布施が手を添えた。

 ふたりで海翔の方へ歩み寄る。

 コート越しでも伝わる大きな手の感触に鼓動が跳ねた。

「一緒に撮ってもらおう。家族三人での初めての記念写真だ」

 布施がなんの躊躇もなく、『家族』とサラリと言ってのけるから、瑞希はじっと見てしまう。


「なんだ?」

「なんでもないです……」


 瑞希は一週間も前から落ち着かない気分で、今日が晴れることを願っていた。

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