エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 会話を聞かれてしまったことに、瑞希はマズイと固まった。

 そのテーマパークは、蛭間に誘われたことがあったからだ。


『すみません……』

『いいんだ。俺のことは気にしないで』


 傷ついていた蛭間の顔を思い出し、(どうしてあげることもできないからな)と考えていたら、「森尾?」と正面から呼びかけられて我に返った。

 両手にチュロスやホットドックなどを持った布施が、戻ってきていた。

「あ……布施さん、ありがとうございます」

 笑顔を作って受け取れば、彼の眉間に皺が寄る。


「ぼんやりしていたな。疲れたのか?」

「いえ、昨日の蛭間さんのことを――」


 言いかけてハッと口をつぐむ。

 布施にするような話ではないと思ったからだ。

 ごまかそうとして、膝に座らせた海翔に「どれから食べる?」と話しかけたら、布施の眉間の皺を深くしてしまった。


「蛭間というのは、前にホテル前で会った男だよな?」

「布施さん、その言い方はちょっと……」


 周囲を確認したのは、誰かに会話を聞かれていないか気にしたためだ。

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