エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 事情を知らない他人からしたら、浮気をした妻を夫が問い詰めていると取られかねない。

 幸いにも誰にも聞かれておらずホッとしたが、腕組みをして見下ろしてくる布施は不愉快そうだ。


「そういえば、あの男もこのテーマパークに誘ってきたんだったな。なし、という流れになったと思っていたが」

「そうですよ。蛭間さんとは遊びにいく理由がないので。布施さん、やきもち焼かないでください」

「やきもち……」


 初めて聞いた言葉のように布施が目を瞬かせ、瑞希はハッと赤面した。

(勢いで恥ずかしいこと言ってしまった。でも、間違ってないよね? 布施さん、私のことを本気で想ってくれているんですよね?)

 問いかけたくて、できずにいる言葉を心の中で呟く。

「森尾」

 照れくさくて目を逸らしたら、やけに真剣な声で呼ばれた。

 すると膝の上の海翔が、急に泣き出した。

「けんか、ダメ! イヤなの!」

 お互いの好意を探り合うようなやり取りが、二歳児には喧嘩に見えてしまったらしい。

 慌てて「喧嘩じゃないよ」となだめる、ふたりの声が重なった。


「けんか、ない?」

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