エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 それが怖くて、プロポーズにいい返事ができなかったことを打ち明けた。

「そうか……」

 布施の顔が曇る。

「どう話せば、信じてもらえるんだ……」

 それは瑞希へではなく、彼自身への問いかけのように聞こえた。

 瑞希の説明はまだ途中である。

 一番伝えたいのは、『信じられなかったが今は違う』という言葉だ。

『信じたい』という思いを口にしようとしたが、その前に布施が、寝ている海翔をズイと瑞希に差し出した。

 慌てて受け取ると、起こさないように気をつけてずっしりと重たい体を抱き直す。

 そうしていたら、なぜか布施が背を向けてスタスタと園内を戻りだした。

「布施さん?」

 怒らせてしまったのかと焦ったが、それならば出口の方へ向かいそうなものである。

 海翔を抱えてベビーカーを押すのは難しく、瑞希は布施を追えない。

 布施は、瑞希から十メートルほど離れたアーケードの手前まで引き返すと、クルリと向き直って突然、大声で叫んだ。


「君が好きだ! これから先も永遠に愛し続ける! だから……俺と結婚してくれ!」


 周囲には少なくない客がいる。

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