エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
「ありがとう。俺はもっと愛してる」


 艶めく瞳には蠱惑的な色が。

「瑞希」

 名前で呼ばれた途端に、体の芯が甘くうずいた。

 恋仲になれたんだという喜びが、周囲の雑音を消してくれる。

 唇の距離を詰めてくる彼に合わせ、瑞希も目を閉じようとしたが――。

 触れ合う前に、「イヤッ!」と海翔が突然叫んだ。

 驚いて布施と体を離したけれど、海翔は瑞希の腕の中で目を閉じたままだ。

「あしょぶの! かえりゃない!」

 それは寝言のようで、海翔が今にも泣きそうに顔をしかめている。

 甘い雰囲気が立ち消えてキスはできずじまいかと残念に思った瑞希であったが、布施が海翔を取り上げた。

 十二キロの決して軽くない体を悠々と片腕で抱っこして、もう一方の手は瑞希の後頭部に回された。

「きゃっ……!」

 グイと引き寄せられ、ふたりの唇が重なる。

(布施さんの愛情が伝わってくる。あなたのこと、信じます)

 唇を離したら、瑞希は照れくさくて布施の顔をまともに見られない。

「婚約指輪、いただいてもいいですか?」とはにかみながら求めたら、布施が一瞬黙った後に口の端をつり上げた。

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