エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
「この前はどうも」と言われ、潤一が「ああ」と思い出していた。

 ひと月ほど前に潤一が国会議員に同行してパリに出張していた時に、フランス側の議員の通訳をしていた人がブノワだという。


「今日は本田議員はいらしていないんですか?」とブノワが聞いた。

「ええ。私は秘書ではなく官僚ですので、本田議員とはあの時以来お会いしていません。このパーティーも、仕事とは無関係の個人的な立場で参加しています」


 会話に日本語とフランス語が入り混じる。

 金子が海翔を「可愛いね」と褒めてくれたが、不機嫌のさなかにいる海翔は喜ばない。

 隠れるように、瑞希の胸に顔を埋めてしまった。

(大人の会話が楽しいわけないよね)


「潤一さん、私と海翔は庭で遊んできますね」

「ああ。すまないな」


 もしかするとこれが潤一にとって有益な人脈になるかもしれないとも考え、瑞希は邪魔にならないよう海翔を連れてテラスから庭に出た。

 パステルを塗ったような水色の空と白い雲。

 ピカピカの太陽に、色とりどりの花と緑。

 小さな噴水の飛沫は輝いていた。

< 200 / 224 >

この作品をシェア

pagetop