エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~


 ふたりは、瑞希が斜め後ろ三メートルほどの近距離にしゃがんでいることを知らない。

 なにかを企んでいそうな会話に、瑞希は聞き耳を立てる。

 どうやら金子はフランスの製薬会社の重役のようだ。

 新薬の日本での認可への道を模索中で、その中に潤一も組み込もうとしているのがわかった。

(柴山って厚生労働大臣だよね。官僚とはいっても外務省の布施さんは、どうにもできないと思うけど)

 なにを勘違いしているのかという呆れの他に、夫をコマのように使おうとしているふたりに瑞希はムッとした。

 ふたりの背を睨んだら、「布施の奥さんを使うのは?」と話の矛先が自分に向いたので驚く。


「奥さんから頼ませるというのか?」

「ええ。布施は新婚だそうですよ。さっき挨拶した時も、奥さんにぞっこんといった雰囲気でしたよね。大人しく従順そうな可愛い奥さん。まったく羨ましい。私の家内も若い頃はあんな感じだったんですよ。今はすっかり強くなってしまい……」

(えっ、そんな風に見えた?)


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