エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
「そうですね。我々のフランス語はわからないでしょう」


 挨拶の際、ブノワも日本語を理解している様子だったので、瑞希は日本語で自己紹介した。

 その後は海翔に構いきりでほとんど会話に参加しなかったため、フランス語が話せないと思われたらしい。


「ママにも、はい。ダンゴ虫、あげりゅ」

「後でもらうから、ちょっと待ってね。ママ、あの人たちとお話してくる。あ、ダンゴ虫、ポケットに入れたら駄目だよ。連れて帰れないと言ったでしょ?」


 笑みを作った瑞希は立ち上がると、テラスの柵越しにふたりと対峙した。

 ブノワがにこやかに日本語で話しかけてくる。

「マダム布施、ここにいらしたんですか。庭の花に紛れてわかりませんでした。マダムの方が花より美しいですけど」

 一般的にフランスの男性は女性を褒めるのに長けている。

 ブノワも例にもれず瑞希を散々褒めちぎり、それから本題を切り出した。

「金子さんが、マダムにお願いがあるそうです。私がお坊ちゃんと遊んでいますので――」

 瑞希はその言葉を遮り、「新薬認可の件ですね?」とフランス語で聞き返した。

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