エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 ギョッとした顔のふたりに、瑞希は笑みを崩さずに続ける。

「申し訳ありませんが、ご協力できません。夫は官僚といっても外務省ですので管轄外です。なにより私は馬ではありませんし、落とされたくもありませんので、これで失礼します」

 ふたりが慌ててごまかそうとしていたが、それを無視した瑞希は海翔を連れてその場を後にした。

 建物内に戻り、潤一を探す。

 主役であるフランス経済連の元会長と談笑していた潤一は、瑞希に気づくとすぐに会話を切り上げて側に来てくれた。


「海翔の機嫌が直ってるな。ありがとう。後は俺がみているから、瑞希はゆっくり食べてくれ」

「はい……」


 瑞希の眉が微かに寄っていることに、潤一が気づいた。

「どうした?」と問いかけたが、瑞希が答える前に勘づいたようだ。

「そういえば、ブノワさんたちも庭に出ていったな。なにか言われたのか?」

 瑞希は顔をしかめて頷く。

「褒めちぎられました。将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、ですって」

 それだけの説明で、潤一は瞬時に全てを理解してくれた。


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