エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
パリの幸せな家族
セーヌ川は今日も穏やかに街の中心を流れ、川岸には若者たちが腰を下ろしてお喋りを楽しんでいる。威風堂々と立つ凱旋門に、そこから続くシャンゼリゼ通りは、今日も車が渋滞だ。
バラ窓の美しいノートルダム大聖堂には観光客が押し寄せ正面広場はいつも賑やかだが、裏手の公園は静かで、瑞希はベビーカーを押してたまに散歩をしている。
ここはパリ。
潤一が大使として在フランス日本国大使館に勤務するようになったのは、海翔が五歳の時で、それから二年ほど一家はパリで暮らしている。
大使館近くの一軒家。庭は広く、警備員付きという恵まれた住環境で、瑞希は「お帰りなさい」と夫を迎えた。
「ただいま、瑞希」
今は正午を回ったところで、潤一は昼食をとるために帰宅する。
瑞希がキッチンへパタパタ駆けていったら、リビングから「オギャー」と声がした。
急いでリビングに戻れば、潤一がベビーベッドから生後五か月になる娘、帆香(ほのか)を抱き上げていた。
潤一がバツの悪そうな顔をする。
「ほっぺを触ったら起こしてしまった」
「もう、寝かしつけたばかりだったのに」
帆香がまだ瑞希のお腹の中にいる時から、潤一は溺愛していた。