エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
「ああ。それだけだよ。問題ない」


 一般的に言われているパリジャンの特徴は、まず自己主張が強いことだろう。

 遠慮や謙遜を美徳とする日本文化とは違う価値観がある。

 その他には、気分屋で時間にルーズ、失敗しても謝らずに誰かのせいにする……といったように困る気質ばかりが強調されがちだが、瑞希と潤一はこの街に住む人の長所もよく知っていた。

 海翔にしたのは、それを踏まえてのアドバイスだ。

「ここはパリだから、大丈夫なんだよ」

 瑞希は微笑んでそう言って、海翔に蕎麦の続きを食べるよう促した。

 そして結果はというと――。


 十六時半、瑞希は帆香を抱っこして海翔を迎えに小学校まで行った。

 門前に着くと、玄関から海翔とルシアンが仲良く話しながら出てくるのが見えた。

「あ、お母さん。もう来てる」

 瑞希を見つけた海翔が嬉しそうに言った。

「僕んちはまだみたい」と、ルシアンが頭の後ろで手を組みのんきな声で言う。


「お母さん、時間通りに迎えに来たことないんだよな。昨日は三十分、待たされた」

「待ってる間、クイズを考えたらいいよ。明日の休み時間に出しっこしよう」

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