エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
「嫉妬かよ。可愛がっていた部下が、実は自分に懐いていなかったと知って、今さらショックを受けてんのか?」

そんなことはないと言い返そうとしたが、できずに目を逸らしグラスをあおる。

(酔い潰れた俺を介抱してくれたのは三年前だったな。あの時、森尾に好きだと言われた記憶があるんだが、現実ではないのか? 自信がなくなってきた)

あの頃、布施には婚約者がいた。

上司の紹介で出会い、交際期間は一年ほど。

京香は全てにおいて非の打ち所のない完璧な女性であったと、布施は思い返す。

京香を好きだった、はずだった。

婚約解消を告げられた時、激しく傷ついたのは確かだ。

だからこそ婚約解消から半月ほどで舞い込んできた代理大使の話に食いつき、気持ちを切り替えるよい機会にしたのだが、不思議なことにその後に思い出すのは瑞希の顔の方が多かった。

入省時から指導役として瑞希を鍛え、彼女は一生懸命に応えて成長している途中であった。

時には厳しいことも言ったが、めげずに笑顔で乗り越えてくれた可愛い部下だ。

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