エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
その他の感情はなかったはずなのに、折に触れて瑞希を思い出すのはなぜなのか……布施はアフリカで、自分の気持ちを分析しようと何度か試みた。

しかし結論は出ていない。

帰国して、瑞希の顔を見ればなにかわかるかと期待したが、辞めたと知って愕然としたのだ。

その翌日に思わぬ場所で再会し、子供がいると聞かされて衝撃が二重になった。

(祝わせてもくれず、よそよそしい態度を取られたな。森尾にとって俺は、所詮その程度の存在だったということか)

虚しい思いになり無意識に唇を噛んだら、小堺に気を使われた。


「いやいや、冗談で言ったんだよ。森尾ちゃんは布施に懐いていた。戦隊ヒーローの話題を振らなかったのは、慕うがゆえだろ」

「どういう意味だ?」

「こんな話をしたら、くだらないと言われそうだからやめたんじゃないか。お前に呆れられたくなかったんだよ。俺には呆れられても構わないから、戦隊ヒーローの話を熱く語った」


「こういうことだろ」と小堺は解説して笑う。

布施は嘆息してから、口角を上げた。


「そういうことにしておくか。すまないな、気を使わせて」

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