エリート外交官の激愛～秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています～

「で、森尾ちゃんがいないから落ち込んでるのか？　あれだけ目をかけてやったのに、という心境？　ということは、辞める前にお前に連絡はなかったのか」


小堺は意外そうな顔をしている。

世話になった上司に、電話で挨拶せずに辞めるような薄情な人柄ではないと思っていたようだ。

布施は天ぷらの続きを食べながら、昨日のことを話した。


「実は昨日の休みに偶然、森尾に会ったんだ。子供がいるんだってな。驚いた。結婚が退職の理由だったのか」

「ああ、そうか。お前、退職理由も知らないもんな」

小堺が声を潜めて言う。

「森尾ちゃん、妊娠して辞めたんだよ。結婚はしていない。シングルマザーで頑張ると言ってた」

「シングル？　なぜ？」

「詳しい事情を俺は知らないが、森尾ちゃんは相手の名を誰にも言わないそうだ。それで、政界の大物と関係があったんじゃないかとか、不倫の子じゃないかとか、ひどい噂が流れたな」


当時を思い出したように、小堺が同情的に眉を寄せる。