エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
「森尾ちゃんも陰口に気づいていたはずだよ。白い目で見られて、そのせいかつわりが重かったようだ。げっそり?せて、見ているこっちがハラハラした。それでも休まず働き続けて、今のうちに貯金しとかないとって無理して笑うから可哀想になった」

小堺はグラスを手にして、空であることに気づいた。

半個室から通路に顔だけ出して、店員を呼ぶ。

「同じものをふたつ」と布施の分のお代わりも頼んでから、手に取った焼き鳥を睨む。

「相手の男、誰だろ。ひどいよな。森尾ちゃんひとりに苦労させて、責任取らないんだもんな」

布施の箸から天ぷらが皿に落ち、返事もできないでいた。

鼓動が徐々に速度を上げていくのは、まさか……という予感が膨らむからだ。

「布施?」と声をかけられ、ハッとして顔を上げる。

揺らした視線を小堺に止めると、震えそうな声を制御して問いかけた。


「教えてほしい……」

「なにを?」

「森尾の子供はいくつだ? 妊娠がわかったのは? 産休にはいつ入った? できれば出産の年月日も知りたい」


質問もさることながら、布施から緊迫感が漏れ出ていたのだろう。

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