エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
追及
柔らかな日差しが心地いい。
コートいらずの南風に、瑞希の肩までの下ろし髪がなびいた。
今日は日曜で、海翔をベビーカーに乗せて外出中だ。
ベビーカーは父が押してくれて、瑞希の大きなリュックには手作りのお弁当と敷物、オムツや着替え、ソフトビニール製のボールなど、レジャーグッズが入っている。
徒歩十五分程の場所に大きな公園があり、そこを目指していた。
「じいじ、ありぇ、なぁに?」と海翔が指さしたのは、道路標識だ。
「標識だな。駐停車禁止ってことだ」
「ちゅうて? なぁに?」
「ここに車を止めたらダメっていう――」
「なんで?」
「なんでって、道が狭いから――」
なぜ狭いのかとさらに問われて、瑞希の父は唸ってしまった。
助けを求める視線が、瑞希に向けられる。
最近になって海翔はよく、『これなぁに?』『どうして?』と聞く。
順調に成長している証拠で嬉しいことだが、返事に窮する時もある。
父に代わり、瑞希が海翔に答える。
「この道を作った人が、このくらいの広さでいいと思ったからだよ」
「ちゅくったの、だぁれ?」
「昔の人。歩きやすい道を作ってくれてありがとう、だね。公園まで続いているから嬉しいね」
「うん!」
瑞希も父と同じように最初は、生真面目に質問に答えていたのだが、そんなものは必要ないということが最近になってわかったところである。
なぜ空は青いのかと問われたら、『お空に色を塗った神様が、青がいいって思ったからだよ』と答えればいい。
『でも夕焼けは赤で、夜は紺色だよね。海翔は何色の空が好き?』
『うんとね、虹色!』
自分の問いかけに大人が答えて会話をしてくれる……海翔はそれが楽しいのだ。