エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
ここでママは忙しいから、などと言えば、怒って泣かれて余計に面倒なことになるのは目に見えていた。

(イヤって言えるようになったのも成長だから……)

なるべく前向きな言葉を心の中で呟いて、海翔のために全ての作業を中断するのであった。



時刻は八時。

「おはようございます。森尾です。よろしくお願いします」

「しましゅ!」

海翔の預け先は自宅から徒歩七分ほどの無認可保育園。

両親と暮らしていることがマイナスに働いて、残念ながら料金の安い認可保育園には入れなかった。

それでもここはいい園で、海翔は先生たちが大好きだ。

キャラクターもののエプロンを着た若い女の先生が、ニコニコと出迎えてくれる。


「海翔くん、おはよう。今日もいっぱい遊ぼうね」

「うん。こーえん行く?」

「あとで行くよ」

「ヤッター!」


飛び上がって喜んだ海翔は、ちょっと背伸びをして靴棚に自分の靴を押し込むと中へ駆けていった。

去年まで瑞希と離れるのが心細くて朝は必ず泣いていたというのに、逞しくなったものだ。

(バイバイもせずに行っちゃった。泣かないでいてくれるのは嬉しいけど、ちょっと寂しい)

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