僕の歩く空
祖母は静かに話しはじめた。
「早苗は、手術をしたんだよ。」
「え…、そんなどこが悪いの?ねぇ、おばあちゃん。」
祖母はため息のような深呼吸をして、悲しい顔で言った。
「中絶だよ、妊娠していたから、その中絶手術をしたんだよ。かわいそうに、おばあちゃんは何もしてあげられないよ。」
そう言って。おばあちゃんは涙を流していた。
隣の部屋のおじいちゃんも泣いているのだろう。
僕はショックのあまり、息ができなかった。
なぜ早苗がそんな事になったのか、原因は嫌でもわかってしまっていた。
「おばあちゃん、母さんは知ってるの?」
祖母は首を振った。
「じゃぁ、あいつは?
あいつは知ってるのか?」
怒りで声が震えていた。僕は悔しい、僕は早苗の事を救えない。悔しくて悔しくて、自分がみじめだった。
「早苗が誰にも言わないでほしいって言うんだよ、だから誰も知らないんだよ。秀司には伝えておくよ、早苗には内緒にしておいておくれよ。」
「分かった。」
僕はお風呂に入った。
その間、祖母は早苗にご飯を食べさせてあげている。一口一口、口に運んであげるのだ。
それでも早苗はほとんど食べないらしい。