僕の歩く空
「誰、りえちゃんて。」
秀司の笑顔の裏に何があるんだ。
この悪ガキ。
「家庭科の藤田りえ。」
「マジかよ、ぜってー無理じゃん、相手にされないし、問題にされたらめんどくせーって。」
やっぱ、秀司はバカだった。
しかし秀司は自信ありげで、かまえていた。
「俺、知ってんのね、りえちゃん、たかしのこと好きなのね。」
呆れた。
「バカか、俺話したことないし、授業もろくに受けてないっつーの。」
俺はため息をついて、また仰向けに寝た。
秀司はそれでも、なお自信があるらしく語りはじめた。
「たかし君て、かなり鈍感なところあんのね、りえちゃんは、たかしがタイプなの。お前が昼頃いつも学校くんじゃん、そんときいつもりえちゃん、家庭科室でご飯食べてるんだけど、お前が見えると、箸止まんのね。これ見とれてるわけね。」
俺は目をつぶり、腕の下で想像していた。
あの新任が、俺を見ていた。
果たしてそれは、秀司が言っている事に当てはまる理由からなのか。
それとも秀司の作り話に騙されてるだけか。
どうなんだ。
分かんねぇ。
「たかし、聞いてる?
だから、たかしに確かめてほしいことあんの、やってくれるんでしょ?おーい。」
「おー。」
秀司はワクワクしているようだった。
「りえちゃんとこ行って、彼氏いる?って聞いてきてよ、でその反応見るからさ。」
「そんなんで何が分かんの?」
「たかしは子供だなぁ、りえちゃん、そうゆう話になると顔赤くなんの、しかも、お前に聞かれたもんなら、動揺しまくりでしよ、そして、りえちゃんは動揺が隠しきれない時、思わずこうやって、右の耳たぶいじんの。新任紹介の時、初めての授業、いっぱい緊張すると触るの。そして初めてたかしを見た時も。」
こいつは、相当、新任を観察していたらしい。
そして気に入っているみたいだ。