僕の歩く空
秀司の秘密

秀司は家に真っすぐ帰った。
閑静な住宅街でも一際目立つ、大きな家は誰も寄せ付けない感じがしていて、秀司はいつも他人の家にいるみたいな気分だった。

車庫には高級車が三台。

 おやじもういるよ。

家に入り、リビングに行くと父親がいた。

「お、秀司久しぶりだな、学校はどうだ?」

淡々とした口調は、秀司を凍らせる。

「楽しいよ。お父さんお帰りなさい。」

「母さんは、いつものお稽古事か?」

「うん、たぶん。母さんは熱心だから。」

「まぁいい、夕食には戻るだろう。」

「僕、勉強してくるよ。」
秀司は二階の奥の自室に向かった。
ドアには鍵がかけてある、誰にも入らせないために、以前、自分で付けたが、この部屋に誰かが入る事はなく、鍵なんて必要ないのかもしれない。
しかし、鍵があるだけで秀司は安心する。

秀司の部屋には窓が一つあるがカーテンは開けない。
空気清浄器はつけたままにしていて、掃除も夜、みんなが寝静まった頃にやっている。
その時、唯一窓を開けるくらいだった。

秀司の部屋の広い壁には、何百枚もの写真が貼られている。
キレイな空や夕日、海や山もある。

母や父も、友達も。

でも、誰にも見せない。
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