最初のものがたり
離れていく気持ち
2学期が始まってからは、
文化祭の準備に追われた。
放課後は残ってみんなで作業をした。
私達のクラスは縁日をする事になった。
文化祭って言葉にワクワクする。
お祭り騒ぎ。
私は看板作りを任され、
友達と絵の具で色を付けていた。
「ナナミ、センスなぁい」
友達にからかわれながらも頑張った。
「ねぇ、工藤くん最近、
南さんと一緒にいるよね。」
ズキッとする。
うん、知ってる。
いつからか勇磨は、
南さんを追い払わなくなり、
一緒にいる事が増えた。
きゃっきゃっ騒ぐ南さんの声が鬱陶しい。
「ナナミの事、好きだとか言ってなかった?」
冗談だよ、からかわれてただけ。
そう言ってその場から離れた。
勇磨にぴったり張り付く南さん。
時々勝ち誇った顔で私を見る。
あの日から勇磨は私を無視してる。
もう嫌味も言わなくなったけど、
私がいないみたいに過ごす勇磨の態度が、
心に深く刺さって痛い。
トモとの約束だから平常心。
私も見ない。
よく考えたら最初の頃の勇磨に戻っただけだ。
泣かないし騒がない。
ダンスの事だけ考える。
そう決めてるけど、文化祭の準備で
クラスで過ごす時間が増えて、
2人の姿を見る時間も増えると辛い。
でも、私も怒ってる。
私は何も変わってないし、
悪い事もしてない。
勇磨に無視されるような事は1つもない。
絵の具のバケツを持ち廊下に出て、
水道で水を入れる。
教室から離れてちょっとホッとする。
なのに、
南さんはわざと勇磨を連れて、
水道にやってきた。
私から離れた蛇口をひねり、
ぞうきんを洗う。
「きゃあ冷たい!工藤くんやってぇ」
濡れた手を勇磨の頰にあてる。
その間もチラチラ私を見る。
何?何なの。
見ない。
でも気配で分かる。
南さんの手首を握って頰から離し、
代わりに自分が洗う。
「工藤くんの手、あったかい」
だから、何なの!
勇磨は私を見ない。
そう、私は勇磨にとって透明人間なんだから。
そうだ、私は透明人間だ。
じゃあ堂々と自分の仕事をしよう。
見ない。
知らない。
バケツを持って教室に戻ろうと、
2人に背を向けた。
「ねぇ、工藤くん。
今度、コスモパークの観覧車に、
一緒に乗らない?」
ハッとして振り返り2人を見た。
え、観覧車。
「何?木下さん。立ち聞きしないで」
あからさまに意地悪な顔をする南さん。
勇磨は無表情のまま私を見て、
南さんに視線を戻す。
「そうだな。あの観覧車、
夕陽がキレイなんだよな」
南さんが派手に喜ぶ。
私の中で何かが音を立てて崩れた。
文化祭の準備に追われた。
放課後は残ってみんなで作業をした。
私達のクラスは縁日をする事になった。
文化祭って言葉にワクワクする。
お祭り騒ぎ。
私は看板作りを任され、
友達と絵の具で色を付けていた。
「ナナミ、センスなぁい」
友達にからかわれながらも頑張った。
「ねぇ、工藤くん最近、
南さんと一緒にいるよね。」
ズキッとする。
うん、知ってる。
いつからか勇磨は、
南さんを追い払わなくなり、
一緒にいる事が増えた。
きゃっきゃっ騒ぐ南さんの声が鬱陶しい。
「ナナミの事、好きだとか言ってなかった?」
冗談だよ、からかわれてただけ。
そう言ってその場から離れた。
勇磨にぴったり張り付く南さん。
時々勝ち誇った顔で私を見る。
あの日から勇磨は私を無視してる。
もう嫌味も言わなくなったけど、
私がいないみたいに過ごす勇磨の態度が、
心に深く刺さって痛い。
トモとの約束だから平常心。
私も見ない。
よく考えたら最初の頃の勇磨に戻っただけだ。
泣かないし騒がない。
ダンスの事だけ考える。
そう決めてるけど、文化祭の準備で
クラスで過ごす時間が増えて、
2人の姿を見る時間も増えると辛い。
でも、私も怒ってる。
私は何も変わってないし、
悪い事もしてない。
勇磨に無視されるような事は1つもない。
絵の具のバケツを持ち廊下に出て、
水道で水を入れる。
教室から離れてちょっとホッとする。
なのに、
南さんはわざと勇磨を連れて、
水道にやってきた。
私から離れた蛇口をひねり、
ぞうきんを洗う。
「きゃあ冷たい!工藤くんやってぇ」
濡れた手を勇磨の頰にあてる。
その間もチラチラ私を見る。
何?何なの。
見ない。
でも気配で分かる。
南さんの手首を握って頰から離し、
代わりに自分が洗う。
「工藤くんの手、あったかい」
だから、何なの!
勇磨は私を見ない。
そう、私は勇磨にとって透明人間なんだから。
そうだ、私は透明人間だ。
じゃあ堂々と自分の仕事をしよう。
見ない。
知らない。
バケツを持って教室に戻ろうと、
2人に背を向けた。
「ねぇ、工藤くん。
今度、コスモパークの観覧車に、
一緒に乗らない?」
ハッとして振り返り2人を見た。
え、観覧車。
「何?木下さん。立ち聞きしないで」
あからさまに意地悪な顔をする南さん。
勇磨は無表情のまま私を見て、
南さんに視線を戻す。
「そうだな。あの観覧車、
夕陽がキレイなんだよな」
南さんが派手に喜ぶ。
私の中で何かが音を立てて崩れた。