最初のものがたり
ナナミを信じる!

文化祭の準備が終わるとトモの家に直行した。

準備の途中で抜ける事も増えた。

勇磨と南さんを、
少しでも見なくていいのは助かった。

だけど、南さんは休み時間も勇磨に張り付き、
私の横でずっと黄色い声で話してる。

「ねぇいつにする?観覧車。」

観覧車の話題が私を傷つけると、
本能的に感じたのか、
南さんはその話ばかりする。

本当、嫌な女!

だから私は休み時間も廊下で外を眺めた。

心を落ち着かせる。

空が秋の空になってる。

まだ残暑厳しいけど、朝晩は涼しい。

勇磨にまたおばあちゃんかって言われそう。

そう思ってまた心がチクチクする。

チカが教室から出てきた。

「ナナミ、何、黄昏てんの?」

ケラケラ笑う。

「恋に悩んでるんだよな」

トモも出てきて笑う。

「なるほどねー」

意味深に2人が笑う。
トモが行った後、チカが言った。

「ねぇ、友永くんもそうだけど、
ナナミが最近仲良くしてる金髪の先輩達、
昨日駅でお年寄りに親切にしてた。
やっぱ人は見かけによらないね。
ナナミの友達って言うからさ、
いい人だとは思ってたけど。
まぁ色々言う人いるけどさ、
私はナナミの味方だからね」

泣きそうになった。

私が不良と付き合ってるって、
噂になってる事を言ってるんだな。

やっぱりチカはいい。

チカを抱きしめた。

「ナナミ、どうした」

「なんでもない」

私達の横を勇磨が通り過ぎた。

チカは勇磨に聞こえるように大声で話した。

「私はナナミが好きだから、
大好きなナナミの友達を信じる。
ナナミの好きなものを否定しないし認める。
ナナミが全て打ち明けてくれなくても、
私は好きだって信じてるって、
言い続けていく。
だからナナミ」

そこで言葉をきって私にこっそり言う。

「ナナミも好きなものは好きっていいなよ」

チカ。

ありがとう、私を信じてくれて。

誰かが無条件で信じてくれて、
好きって言ってくれると元気になる。

荒んだ心が温かくなる。

好きなものは好きか。

よし、今日もソロパート、特訓しよう。

剣道場に急いだ。
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