最初のものがたり
自暴自棄になっていた。

立ちあがって窓を叩き、
ゴンドラの中で叫んだりした。

グラグラ揺れる。

もうどうでもいい。

どうにでもなれ。

そう思った瞬間、
ゴンドラが大きく揺れ、
軋む金属音と共に回転が止まった。

突然の大きな衝撃に、
体がバランスを失い、
椅子に倒れこんだ。

痛いっ。

ふいに我に返る。

1番てっぺんで、
風がもろに横からあたる。
揺れが激しくなる。

窓がガタガタ音を立てる。
ものすごい風の轟音が響く。

振り子のように揺れるゴンドラ。

怖い。

1度怖いと思ったら、もうダメだった。

どうしょう、怖い。

なんで止まったの?

しかも頂上!

ゴンドラ内の電気が消えた。

大声で「わー」と叫んだ。

怖い。

早く動いて。

誰か助けて。

椅子に座ってられなくて下に座り込む。

冷たい金属が肌に触れる。

頭を抱えて小さく丸まる。

自分の叫ぶ声で余計に理性を失った。

「わーわー」

怖い。

勇磨、助けて。

気が付くと、
勇磨の名前を何度も呼んでいた。

上手く息が吸えない。

助けて勇磨。

苦しい。

怖い。

苦しい。

勇、磨。

ダメ、落ち着いて。

携帯を取り出す。

「勇磨」

勇磨、助けて。

「勇磨!」

何も考えられなかった。

ただ、勇磨が浮かんだ。

勇磨の声を聞きたい。

声を聞くだけでいいから。

後で謝るから。

だから今だけお願い。

ほとんど反射的に携帯を握ってた。
震える手で勇磨の名前を探す。

1コール鳴らして、
コール音で我に返った。

南さんの顔が浮かぶ。

「夕陽がキレイだった」

そうだ、勇磨はもう。

目をつぶって耐える。

ダメだ。

勇磨に助けを求めたらダメだ。

素直になれず、勇磨を傷つけ、
離れた勇磨に裏切られたと逆恨みして。

なのにまだ勇磨を離したくない私。

もう、どうしようもないな。

1人で耐えろ、バカナナ!

自分で自分を励ます。

ゆっくりと呼吸を繰り返す。

少し落ち着いてもすぐにまた恐怖に襲われる。

風は強くなる一方で揺れも激しくなった。
窓がガタガタ音を立てて揺れる。

真っ暗な中で1人ですごく、怖い。

どうしょう。

耐えなきゃ。

深呼吸しても何しても怖い。

勇磨、勇磨!

その時携帯に光がともり着信音が鳴った。
すがるように画面を見つめた。

勇磨からだ。

今の1コールで気付いてくれた。

また反射的に携帯を耳に当てた。

南さんの事も全て吹っ飛んだ。

勇磨!

「ナナ?」
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