最初のものがたり


私を好きだって言ってくれたけど、
やっぱり勇磨の口からちゃんと聞きたい。

「勇磨は、
女の子にチャラチャラ適当な事を言って、
誘ったり遊んだりする人じゃないから。
だから私は、
勇磨は真剣なんだなって思った。
南さんに真剣なんだなって」

勇磨の女嫌いとこじらせを知ってるから、
南さんへの対応が、特別なのはよく分かる。

黙って私を見ていた勇磨。
目が鋭くなり、また怒らせた。

でも次の瞬間には優しく見つめて言った。

「質問に質問で返すなよ。
まずはナナから応えて。
ナナの答えを信じるから。
ナナを信じるって俺、言ったのに、
何度も、勝手に想像して決めるなって、
叱られたのにな。
俺さ、自分でも嫌になるくらい、
情けなくてガキだから。
ナナの話を聞く前に反射的に、
アイツをぶっ飛ばしたくなる」

私の視線に勇磨は赤くなり横を向いた。

「なんだよ、見るなよ。
ナナも悪いんだぞ。」

え、なんで。

「だってナナ、
俺がいなくても楽しそうだから。
俺が意地悪言って泣かしても、
少しするとケロっとしてアイツと帰る。
そのくせ俺と南さんが一緒にいると、
嫌な顔するだろ。
だから、俺、
わざと泣かすようなマネもした。
でもやっぱりアイツの所に行く。
だけど、今は俺に頼ってくれた。
すげぇ嬉しいけど訳が分からないんだ。
だからナナにハッキリと聞きたい。
俺の事、どう思ってるんだよ。」

勇磨。

バカ勇磨。

タツキ達との事だって、
私、ちゃんと説明しようとしたよ。

トモの事だってそうだし。

それに今だって。

私、告白の途中だったのに。

本当にバカ勇磨!

だけどバカは私も一緒だ。

もう、ずっと勇磨が好きだったのに、
認めるのが怖かった。

ドキドキして自分が自分じゃなくて、
余裕がなくて、でもすごく嬉しくて、
胸が熱くなる。

もうずっとそう感じてたのに、
見ないふりして勇磨を傷つけた。

ちゃんと伝えよう。

好きだって、言いたい。

誰にも渡したくないって。

勇磨だけは嫌。

深呼吸をした。

「勇磨、私、学期末テストの後、
チカも勇磨も部活でつまんなくて、
隣駅のショッピングモールに行ったんだ。
服とか見て、あ、このヘアゴム買って」

勇磨が首をかしげる。

「は?なんの話?」

いや、だから最後まで聞けって!

「で、そこでね、小学生の頃に、
習い事で一緒だった友達に再会したの。
それがタツキ。金髪の3年生。
同じ高校だったって盛り上がってさ。
で、一緒にいた先輩やトモを紹介されたんだ。
見かけは派手で、人数も多いから、
不良集団に見えるかもしれないけど、
みんな礼儀正しくて優しくて、
勉強だってするんだよ!」

またチャチャを入れる

「勉強?小学生か」

もう、話さないからね!

そう怒る私にふてくされる。

「それで私も仲間にしてもらってね。
同じ目標に向かって今、頑張ってるの。」

緊張で手が震える。

また大きく深呼吸をして勇磨を見つめた。
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