最初のものがたり
勇磨と私の仲間たち
放課後、トモが迎えに来た。

「アイドルくん、悪いな、彼女、借りてくね」

また、そうやって勇磨を煽らないで。

勇磨もその気にならないで。

でも、彼女。

ぷぷ。

「うっせ、俺はアイドルじゃねぇ。」

トモがニヤッと笑う。

「どっちでもいいよ。
しかし、まさかお前が許すとはなぁ。
昨日はちびを籠に入れる勢いだったのにな。」

トモの言葉に勇磨がため息をついた。

「俺を情けない男呼ばわりしたのも、
ナナがどれだけの思いで頑張ってたのかも、
わざと話してたのは分かってた。
本当、お前、ムカツクな。」

トモがニヤッと笑う。

「じゃあ遠慮なく。
ナナちゃんを借りるね。
さぁ、行こうぜ、ちび!」

そう言って私のカバンを持つ。

「ちょっと待てよ」

トモを追いかける私を追い越して、
勇磨が私のカバンを取り返す。

「俺が持ってく。ナナの仲間に会っときたい」

ちょ、ちょ、ちょっと待って。

何する気?

やめてよ、みんなを怒らせないで。

慌てる私にトモは言った。

「いいんじゃない。
みんなもちびの彼氏に会いたいだろうし。
俺だけ目の敵にされるのは辛いしな。」

彼氏。

ぷぷ。

その響きにぽーっとする。

校門前の待ち合わせ場所にみんな揃ってた。

勇磨はみんなをじっと見回して、
ふいに頭を下げた。

何も言わず、ただ頭を下げてる勇磨に、
タツキが抱きついて背中をバンバン叩く。

「なんだよ、ちびの彼氏はいい奴じゃねぇか。
トモがガキだって言うから、
どんな奴かと思ったぜ」

タツキの腕力には勇磨も敵わないようで、
いいように揉みくちゃにされてる。

笑える。

「だな、ちびの彼氏にしとくには、
もったいないくらいのイケメンだな」

そう言ってミッキーも笑う。

アヤノも騒ぐ。

「間近で見るとやっぱ、
ファンクラブあるの分かるね。
本当、ナナミ、よくやった!」

きゃあきゃあ騒ぐ。
トモは不機嫌そうに、その様子を見てる。

「えっと、勇磨って言ったよな。
俺達は今、達成したい目標がある。
だけど、それを今は話せない。
彼氏にも話せないちびの苦しみも理解してくれ。
でも勇磨を裏切る事は絶対にないから。
ちびに危ない思いもさせない。
帰りは必ずトモに送らせる。」

勇磨は真剣にタツキの話を聞いていた。

トモのくだりで眉を寄せる。

「トモ?そいつが1番心配だ」

タツキを含めみんなハテナ?って顔をする。

「いや、トモは俺達の中で1番強いぞ!
コイツは格闘技もするからな。」

勇磨はトモと向き合い胸ぐらを掴む。

「ナナに手を出したら殺すからな。」

途端にみんな爆笑する。
訳が分からないのは私と勇磨だけ。

「そっか、そっか、
それで俺に敵意剥き出しだったのか。
俺がちびを?いや、ないな。
俺はアヤノだけだもん。」

そう言ってアヤノを抱き寄せた。

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