最初のものがたり
帰り道、いつもの公園の前に勇磨が立っていた。
トモは勇磨に手をあげて帰って行った。
「おかえり、ナナ。」
うん、ただいま。
話したい事がたくさんある。
「あのね、勇磨。
今日私、すっごく上手くいったんだよ。
勇磨のおかげなんだ。
もうずっと上手くいかなくて、
でも、諦めきれなくて。
トモにも協力してもらってたんだけど、
ダメで。
でもね、今日、勇磨の事考えてたら、
意識しない間にできてた。
勇磨、ありがとう。」
嬉しくて嬉しくて、夢中で話した。
優しく笑う勇磨。
「じゃあ、お礼のちゅーして。」
そう言って目を閉じる。
ドキドキしながら周囲を確認して、
素早くちゅっとした。
それでも目を開けてくれない。
まだ、不足って事?
ドキドキと恥ずかしさが全身を駆け巡る。
勇磨のバカ!
もう一度ちゅっとする。
それでも開けてくれない。
最後はヤケになって、
チュチュチュと、繰り返した。
やっと目を開けて爆笑する。
「鳥みたい。」
何それ、どういう意味?
「キスはね、こうやってするの」
そう言って優しく熱いキスをしてくれた。
恥ずかしい。
もう限界超えてる!
勇磨ってスキンシップが過激。
「バカ、全然、過激じゃねーし。
色々と我慢してんだよ。」
優しい瞳にまた魅了される。
完全に私の負けだ。
「ねぇ、ナナ。俺ね、
正直言うとまだちょっと妬いてるんだ。
トモと向こうから歩いてくるお前が、
すごく楽しそうでムカムカした。
トモを、ぶん殴りたくなるのを堪えた。
友達になったしな。
いつまでこういう気持ち、
我慢したらいいのかな。
自分が自分で嫌になる」
ベンチに座って頭を抱えて、
自己嫌悪に陥る勇磨。
あんまり落ち込むから思わず抱きしめた。
勇磨の前に立ってそのまま抱きしめた。
勇磨も私の腰に腕を回した。
もう赤ちゃん勇磨!
勇磨はずるいよ。
私がもう降参してるの分かってる。
「大丈夫。あと1週間くらいだから。
私は勇磨だけ好きだから。
大好きだから。」
そう話して勇磨の髪を撫でる。
ふと、こんな感じ今朝もあったな、と思う。
デジャブ感。
そういえば勇磨、
「また抱っこしてね」って言ってた。
まさかと思って勇磨を覗き込むと、
ニヤニヤ笑ってる。
もぉー!