最初のものがたり
まだ、ケラケラと笑ってる。

なんか、ムカつく。
もー保健室、行こう!

そう言って背を向けた私を引き寄せて、
背中から抱きしめた。

耳元に勇磨の唇が当たる感じがする。

止まらないドキドキに体の神経が集中する。

もうっ!やめて!

こっちは免疫ないんだって!

「ありがとう。嬉しかった。
俺を見ろって言ってくれて。
マジで嬉しかった。
俺の中身を見てくれる女はナナだけだ」

やばいって、これは爆発する。

ファンじゃなくても、これはダメだ!

勇磨の腕を振りほどいて睨んだ。

「もうっこれだからモテ男はやだ!
勇磨にとっては何でもないかもしれないけど、
私は留学とかもしてないし、国際派じゃないし、こんな事を最近はパパともしてないしっ」

きょとんとして、私を見る勇磨

「何の話?」

だから、ぎゅっとしないっていう話。

簡単に触らないで!って話。

黙って聞いていたけど、
たまらないっていう風に、
また爆笑する勇磨。

ひと通り笑った後に悪い目つきになる。

「そっかー免疫ないよなぁ。
パパともしてないしなー。
じゃあ慣れるしかないな。
俺は国際派だから。
それに俺たち、結婚の約束したしね」

そう言ってまた抱きしめる。

「してない」

バタバタする私を抑え力を込めてからかう。

「ねぇナナちゃん、国際派はさ、
ハグだけでなく挨拶のキスもするんだよね。」

冗談だよね。

私の肩を抑え勇磨が真剣な表情をする。

うそ、だよね?

頰を傾けて近付く勇磨。
息が出来ず固まる私。

ど、どうしよう。

どうなるの。

あと数センチのところで勇磨が顔を背ける。

「バカ、抵抗しろよ」

え?

「え、じゃねーし。
お前、おれにキスされて良かったの?」

良くない、良くない。

首振る私を見ながら、
片眉を上げる勇磨の顔が赤い。

「勇磨、顔、赤い」

横を向いて目線を逸らす勇磨。

「ナナ、デリカシーなさすぎ!」

あ、れ。

「あー勇磨、照れてるとか?
照れるくらいならしないでよね」

さらに赤くなって後ろを向く。

「別に慣れてねーし。
簡単じゃねっつうの。」

うん?何?なんだって?

最後のよく聞こえなかった。

「もう行け!これ以上、ここにいたらヤバイ」

何がヤバイんだか。

でも急いで着替えないと、
次の授業に間に合わない。

確かにヤバイ!

保健室にも寄らないとだし。

勇磨に片付けを頼んで保健室に走った。

走っても走っても勇磨の感触が消えない。

走ったからか心臓が痛いくらいドキドキしてる。

どうしちゃったんだろう、心臓。
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