最初のものがたり

さっきから私を見る目が怖すぎる。
ツバサくん、余計な事、言わないでよ。

「いつも?」

そう言ってツバサくんを上目遣いで見る。

「うん、俺さー高いところ好きだし、
観覧車が大好きなんだよね。
なぁなも大好きなんだよね、なぁな。」

ツバサくん、空気読めない。

正直すぎ。

この空気をなんとかしないと。

「うん、でもなんか男同士みたいになっちゃって、ただただはしゃいで騒ぐみたいなね。
本当、友達で騒ぐ延長みたいな、」

そう、いい訳?する私に、
彼女は目は笑わず口元だけ笑って言った。

「えーそんな必死にならなくていいのに。
でもこれからはさ、私が一緒に行くから、
ナナちゃんは大丈夫だよ」

ちょっと目を潤ませて笑う。
ツバサくんは単純に喜ぶ。

「そっか、カスミちゃんも高い所、
好きなんだ。良かった」

優しいツバサくんは少しズレてる。

ここまでだと、その天然は罪だな。

「高い所は苦手だけど、
ツバサくんといると、どこでも楽しいんだ」

甘えて上目遣いでツバサくんを見つめる。

カスミちゃんは上手だ。

ハッキリ伝えないと分からないって理解してる。
ツバサくんは驚いて、でも嬉しそうだ。

なんだ、これ。

絶対、嘘だよ、カスミちゃんは高い所、平気だ。

こんな痛い手にすっかり騙されるツバサくん、
馬鹿みたい!

なんで、こんなの目の前で見させられないといけないのか。

しかもカスミちゃんはわざと、
私に見せてる気がする。

もうやだ。

そう思った時、グイッと腕を掴まれた。
よろけるように勇磨の腕の中に入ったと思ったら、
そのまま背中を押されてゴンドラの中に押し込まれた。

「お願いします」

とスタッフのお姉さんに、
声をかけて勇磨も乗り込む。

ツバサくんは私達が乗った事にも気付かず、
背を向けたまま、香澄ちゃんと話してる。

心がチクチクする。

ツバサくんと会うのも友達でいるのもツライ。

だけど、ツバサくんがあんな馬鹿な手に引っかかるなんて、思わなかった。

ツバサくんがあんな、
The オンナみたいな計算高い女が好きなんて!

なんなの!もーどうしたらいいの?

友達になるって決めたのに、
またイライラしてチクチクして落ち着かない。

2人とも嫌い。

もう会いたくない。

振り返ると次のゴンドラに、
2人が私に背を向けるように並んで座ってる。

2人の距離が近く触れ合う肩に、
また心が張り裂けそうになる。

見なきゃいいのに目が離せない。

瞬間、ガタンとゴンドラが大きく揺れ傾いた!

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