最初のものがたり
「ね、今の、ホント?」

え?

「ナナちゃん、何でもしてくれるの?」

う、うん。

あれ、なんか様子がおかしくない?
ニヤニヤ笑う勇磨。

元気そう?

「そっか。じゃあ俺のものになって。
俺が嫌がっても付きまとうんだよね?
ずっとそばにいてくれるんでしょ。
だったら俺のだよね?」

やっぱ、様子がおかしい。
落ち込んでる風には見えない。
見せないようにしてる、とか?

「勇、磨?」

私の前髪を搔き上げる。

「いいよね?俺ので」

甘く強い視線に、
今まで以上にドキドキした。

どうしたんだろ、私。

すごくドキドキして、
嬉しい気持ちも湧いてくる。

何?この感覚。

「ほら、早く返事しろよ。
落ちてる男はオオカミだって言っただろ。
自らオオカミに喰われに来たんだから。」

その言い方。

本当、ムカツク!

「いいよ。勇磨の望み通りにする。
勇磨が元気になってくれるなら。
いつもの勇磨に戻ってくれるならいいよ。」

私の言葉に勇磨は、
ちょっと眉を寄せて口を尖らす。

「えー。じゃあいい。
俺の事、好きって、
言ってくれないならいらないや」

ブチッ

キレた。

「いらないって!ちょっと何なの?
落ちてるから優しくしてあげてるのに、
調子に乗って。
だいたい私は物じゃないの。
俺の、とかいらないとか失礼じゃない?
もうっムカツク!
勇磨が大ケガして…
救急車で運ばれたって聞いて私、
すごく怖くて…」

ヤバイ、また涙が。
下を向いて顔を隠した。

「なのに、バカ!」

勇磨の膝から逃れようとしたけど、
それを勇磨は許さなかった。

ぎゅっと抱きしめた。

「ごめん、ナナちゃん。泣かないで。
で、俺はどこをケガしたの?」

うん?

え、だから、
手首と足を骨折したんじゃないの?

勇磨がニヤニヤ笑う。

「えー骨折してる足にナナ、座ってんの?
ヒドくね?
あと手首を骨折してたら、
おデブのナナを抱きしめられないなぁ」

え、どういう事?

勇磨の体を見直す。
包帯が見当たらない。

「え、何?分かんない」

ニヤニヤ勇磨がまた私を引き寄せる。

「俺、付き添い。
誰か勘違いしてナナに伝えたんだな。
でもそいつに感謝しないとな。
俺、すごく嬉しかった。
俺をぎゅっとしてくれたよね。
1人にしないよって、あれ何で?
ナナ、俺の事、好きなの?」

は?何その俺様発言!

勇磨を好き?

そんな事、ない、はず。

「バーカ!友達だから来たんだよ」

その言葉にまた口を尖らせる。

「あ、そ。かわいくないな。」

なんだよ、もうっ。

「違うなら早く言ってよ!
背中丸めて落ち込んでる風にしないでよ」

怒る私に舌をべぇっと出してふざけた。

「ちょっとウトウトしてたら、
ナナの鬼気迫る声が聞こえてさ。
おもしろかった」

バカ!

その時、廊下をバタバタ走る音と共に、
ツバサくんとカスミちゃんが現れた。

2人、手を繋いでる。

良かった。

カスミちゃん、病院に行ったんだね。
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