愛しの鳥籠〜独占欲は凶器篇〜


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何重にも施錠された家で僕が帰って来るまでひとりで過ごす事になるランは普段一体どうやって過ごしているのだろう。

僕の事を常に考えてくれてたらいいな。

昨夜のお詫びにここのシェフが作ったいちごのタルトでも買って行ってふたりで食べようかな。

その時のランの喜ぶ顔を想像しただけでニヤニヤしてしまう。

「…」

ふと右隣りから視線を感じてそちらの方に首を動かすと、どんよりとした目でこちらを見ている男がひとり。

大学生のバイトのひとり、大津孝宏(おおつたかひろ)。

僕より背は低いけど、喫茶店のウエイターにしてはガタイがいい。

高校までラグビーをやっていたと言う話を以前聞かされて、深く納得出来たのを覚えている。

今年でバイト3年目になる頼れる奴だ。

「…なに」

物言いたげにジドーッとこちらをただただ見詰めている。

「言いたい事があるならとっとと言えよ」

ラン以外の生き物と会話するのさえ億劫に感じてきてしまっている僕はもう手遅れ。

それがまた幸せなんだけどね。



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