社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 要人は私に向けられた敵意に気づき、おばさんから私を守るように、車の中へ乗せた。

「待ちなさい! 志茉さん、私たちと約束したのを忘れたの!?」

 私に答えなくていいというように、要人は手で制止し、おばさんと向き合った。

「約束か。なんの約束だ?」
「要人さんには関係ありません」

 おばさんは気まずそうに、要人から誓約書の存在を隠した。
 けど、要人はもう知っている。

「誓約書のことか?」
「志茉さんっ! あなた!」
「その件に関しては俺を通せ。志茉にやったことを赦すつもりはない。せいぜい身の回りを綺麗にしておけよ」

 要人の顔は、私から見えなかったけれど、迫力ある声は、私が目を伏せるほど冷たいものだった。
 動き出した車から、おばさんの顔が一瞬だけ見えた。
 おばさんの顔色は蒼白で、私ではなく、要人を睨んでいた――

◇◇◇◇◇

 騒動で疲れ切っていた私だけど、仕事に支障をきたすわけにはいかない。
 メールチェックを終えて、一息つく。

 ――さすがに今日はこれでトラブルは起きないはず。

 でも、私の考えは甘かった。
 愛弓さんはスッポン並みにしつこかったのである。
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