社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「え?」

 きょとんとしていると、要人が二階を指差す。

「服は二階だぞ」
「どうしてサイズがわかるのよっ!」
「触ればわかる。ウエストが増えたのも……」

 ぎろりと私が睨むと、要人は慌てて浴室へ姿を消した。
 要人が言ったとおり、クローゼットには洋服が揃えられ、下着まである。

「なっ……! 私の下着のサイズまでわかるとか……」

 助かるけど、私の心境は複雑だった。
 ここまで知られていると、うかつに太れない。

「なんて恐ろしい男なの……!」

 家の中を見て回ったけど、部屋数もじゅうぶんあり、暮らしやすいように、現代風にリフォームされている。
 一階のリビングから眺める庭の灯籠に灯りがついていて、青紅葉を照らす。
 立派過ぎる家を眺め、時間が過ぎる。

「志茉。気に入ったか?」

 がしがしとタオルで髪をふきながら、要人がリビングに現れた。

「うん。とても素敵な家で……。でも、要人。すごくお金使ったでしょ?」
「まあな。でも、俺は質素なほうだぞ」
「どこが!?」
宮ノ入(みやのいり)の社長や役員は、もっと贅沢だぞ。住んでいるのも高級マンションだし、別荘も持っている」
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