社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 これは後々、改善しようと心に決めた。

「まったく! しっかり自分の好みをアピールしてくるんだからっ!」

 今なら許されるなんて、思っていたら大間違い。
 お風呂を終え、キッチンに向かう。
 仕事をしている要人に、お茶を淹れてから眠ろうと思って、そっとリビングを覗いた。
 ちらりと見えた要人の顔は、怖い顔をしていて、スマホを手に、誰かと話をしている。
 そのせいで、なんとなく声をかけそびれてしまった。
 お茶なんて、和やかな空気とはほど遠い。
 
「電話、終わらないみたいだし、先に寝よう」

 そういえば、寝室を見ていなかった。
 寝室は二階だ。
 これも要人が選んだならきっと――

「そうだと思っていたけど……」

 思わず、がっくりと膝をついた。
 キングサイズのベッドがひとつ、どんっと部屋にでかでかと置かれている。
 とはいえ、眠る所は他にないし、色んなことがありすぎて、疲れきっていた。
 ベッドを前にして、眠気が一気に襲ってきて、ぱったり眠ってしまった。
 もう私に、細かいことを考える力は残ってなかった――
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