社長はお隣の幼馴染を溺愛している
焦がれる想い ※要人視点
 ――俺は母が倉地(くらち)の家族に、嫉妬していることを知っていた。

 倉地のおじさんとおばさんが、亡くなったと母に告げた時、うっすら笑みを浮かべたのを俺は見逃さなかった。
 自分より裕福でない志茉たち家族が、幸せそうに暮らしているのを目にし、母はいつもイライラしていた。
 俺が懐いていたのも気に入らなかったのだろう。
 誰だって、明るい場所が好きで、自分にとって居心地のいい場所を自然と求める。
 暗い思いが潜む場所よりも――

朝比(あさひ)。アパートに設置してあった監視カメラの中身を警察に渡してくれたか?」
『はい。ですが……。よろしかったのですか?』
「ああ」

 俺はその中身を見ていない。
 朝比が気遣いながら、俺に言う。
 中身を見た朝比が、俺に気を遣うということは、そこに映っていたのは、きっと俺の母だ。
 聞かずともわかる。

『明日は社長と倉地さんをお休みにしておきます。火事も明日のニュースに取り上げられるでしょうから』
「ああ、頼む」

 すでに宮ノ入(みやのいり)グループの八木沢(やぎさわ)常務にも伝えてある。
 もし、母が逮捕ということになれば、スキャンダルになる恐れがある。
 それを事前に防ぐためだ。
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